第37章 London days【ヨナ・クレメンス】※R-18
(あの夜よりはかなり片付いたけど、クレイドルに行っても散らかすようだったら本当にお仕置きが必要だね)
ヨナはふっと笑いをこぼして紅茶を飲んだ。
ティータイムが終わり、お昼に差し掛かった頃。
がちゃん。
玄関が開く音がする。
「ただいま!」
(あれ?まだ昼なのに…)
予想外の帰宅にヨナの胸がどきっと音を立てる。
「おかえり、どうしたの?早いね」
「うん、店長が今日はもう帰っていいよって。お客さんも少なかったし、引越しの準備もあるだろうって気遣ってくれて」
レイアは荷物を置いてヨナの元へやってくる。
「引越しの準備って、もう片付けはいいんでしょ?」
「うん。クレイドルに持っていくものはほとんど無いからね。だから今日は…」
そう言ってレイアは椅子に座っているヨナに後ろから抱きついた。
「っ…!!」
「……お出かけ、しよう?」
(もう…急にこういうことするんだから…!)
ヨナは肩越しでニコニコ笑うレイアを見て、少し悔しい気持ちになる。
(離れていた時間が長い分、ドキドキさせられてばっかだよ……レイアはそんなことないのかな)
パティスリーで働いていたレイアからは、焼き菓子の甘い香りがふんわり漂ってくる。
「全く…君って人は……」
「え?」
「どうしてそうやってすぐ俺のことをドキドキさせるの?」
「……え?あ……」
目をパチクリさせるレイアの顎を捉えキスを落とす。
「……んん…」
(俺ばっかドキドキさせられるなんて…ごめんだよ)
唇を離すと、真っ赤な顔で固まるレイアがいる。
「おかえりのキス、だよ」
そう言って頬をすっと撫でる。
「……もう…ヨナ……っ」
どちらともなく抱きしめあう。
ずっとずっと、触れたくてたまらなかったお互いの身体が
今目の前にあって、簡単に触れられる。
簡単に、体温を感じられる。
(どこにいても、君がいるだけでこんなに……)
俺は幸せだ…。
ヨナはレイアの手をとり、午後の日差しが溢れるロンドンへと出かけた。