第35章 Last 2days【別れ】
翌日。
「郵便でーす」
黒の兵舎に手紙が届いた。
「な、なにこれすっごい量だけど?!……って、あら?私宛のもあるじゃない??」
セスは受け取った手紙を談話室に持っていく。
「ちょっとー、手紙が来たわよー………って、これ!!アリスちゃんからじゃなーーーーい!!!」
「んだよセス、うるせーぞいきなり」
中にいたフェンリルが、セスの声に驚き眉根を寄せる。
「セスのテンション……高すぎ」
ルカもボソリと抗議の声を上げる。
「だってだってほらほら!!これ、全部個別に宛てられてるのよ?!はい!フェンリル!!ルカのはこれね!」
セスは重みのある手紙をそれぞれに渡す。
「あー?なんだよこれ?………って!!レイアからじゃねーか!」
「………!」
受け取るルカの顔が真っ赤になる。
「…あんなにヒドイことしちゃったのに……なんて優しいのかしら……」
「わかんねーぞ、セス…恨みつらみがたっぷり書き連ねてあったりしてなー」
「ちょっとフェンリル!そんなわけないでしょっ?!」
キーキーわめくセスを尻目に、フェンリルは手紙を受け取って談話室を後にした。
(さて、と………俺もセスのことは言えねーからな……)
フェンリルは中庭に出る階段に腰掛けて手紙を見つめた。
柔らかく流れるような字で書かれた宛名を指でそっと撫でる。
(ほんとお前……最高の女だな…)
胸の奥のくすぐったさを感じながら、フェンリルはゆっくり封を切った。
セントラル地区。
裏路地の猫溜まりを訪れたレイは、先にいた人物に声を掛ける。
「ここに来たら会えると思ってた」
「あー、レイ!どうしたの?」
ロキはしゃがみ込んで子猫を2匹抱えながら振り返る。
「お前宛ての手紙がうちんトコに来たから…届けに来た」
「手紙?」
2匹の猫たちを下ろし、ロキはレイから手紙を受け取る。
「お前……フラフラして住所不定だから…うちに送ったんだと思う」
レイはふっと笑った。
「……あ!アリスからだ!やったー…嬉しい!ありがとう、レイ」
ロキはニコニコしながら封を切ろうとする。
「レイも手紙貰ったの?」
「ああ。……つーかさ、ロキ…お前手紙貰うってことはアイツと何かあったわけ?」
レイの問いにロキはニヤニヤするだけで答えようとはしなかった。