第35章 Last 2days【別れ】
「ま、泣いても笑ってもあと2日だ…。それまでに、こいつの意地っ張りが治るかはお前次第かもなー、まぁ頑張れ」
「なっ…!どういう意味だよそれは…!!」
カイルはヨナの腕をつかむと、引きずるように部屋を出ていった。
(あと2日か……)
なのに
ヨナにこんな思いをさせてしまった…。
また罪悪感がこみ上げてくる。
(でも……そんなのに浸ってる場合じゃない…よね)
レイアは意を決して、すっかり日の落ちた外を窓から眺めた。
ヨナはカイルに手を引かれそのまま談話室へ入った。
「何で医務室じゃないんだよ」
「あ?そんなかすり傷、医務室で処置するレベルじゃねーよ」
カイルは椅子に掛けたヨナの目の前に絆創膏を一枚たたきつけた。
「……ヤブ医者」
「仮病人に言われたくねーな」
むっとするヨナの隣にカイルが掛ける。
「……お前、アリスが黒の兵舎行ったらどうなるかぐらいわかってたんだろーが」
「何のことだよ」
ヨナは目を合わせることなくしぶしぶ指先に絆創膏を巻く。
「で…どーすんだよ。あと2日……このまま満月まで放置して何も言わずに別れんのか?」
「俺に聞かないでくれる?アリスは野蛮な黒の猛獣共に陥落されたんだ。俺だけじゃ満足できないようなら最初から要らないよ……一人の女性を誰かと『共有』する趣味はないんでね」
「……月小屋の宴をやったお前が言えるセリフか?それ」
「俺は望んで参加したんじゃない!!」
ヨナが激情に任せて机を拳でたたいても、カイルは顔色一つ変えない。
「……お前が望んで月小屋に参加したかどうかなんて関係ねーだろ。俺たちはすでにアリスを『共有』しちまったんだ」
「…………」
「元の世界で…好きになった人と恋に落ちて、普通に幸せに過ごすはずだったアイツの人生を狂わせたのは……こっちの世界の妙なルールのせいだろーが」
「だから……俺はこんなこと……っ」
ヨナの琥珀色の瞳が苦悶に満ちていく。
「アリスは元々『安い女』じゃねーだろ。ただ、優しいだけだ」
「そんなこと、言われなくても分かって……!」
「でもって、お前も本当は優しいはずだ」
「な……っ!!」
顔を真っ赤にするヨナに、カイルがにやりと笑う。