第32章 last 4d【黒への招待】
「あーーーーっっっ!!不純異性交遊はっけーーーん!!直ちに捕まえるわよーっ!!」
少し離れたところから聞き慣れたテンションの高い声がする。
「あ、セスさん!…フェンリルも」
見回りを終えて合流した二人がレイアたちの元にやってきた。
セスはレイアとレイの間に無理やりお尻をねじ込んで座る。
「いくらボスでも抜け駆けは禁止よ?」
後から来るフェンリルも口笛を一つ吹いて続く。
「お、相棒が堂々とレイア口説いてんな?こりゃ赤の奴らに見つかったらまた戦争だな…」
「えっ?!ダメだよフェンリル、それは困る」
レイとフェンリルは顔を見合わせニコリと笑う。長年の絆を思わせる、二人だけのやりとりだ。
「何、見回りもう終わったわけ?」
「ああ。そんでさっき合流して今から帰るとこだ。そろそろ料理もできてんだろ。戻って部屋の準備しよーぜ」
「賛成さんせーい!!」
「あ、私も手伝いたい!」
名乗りを上げるレイアの手をセスがすかさず取る。
「もちろんよぉー!いい?とびっきりの可愛い装飾手伝ってね?」
セスはそのままレイアをエスコートしてすたすたと先に歩いていってしまった。
その後姿を見て、二人は苦笑する。
「なぁフェンリル……お前もさ…アイツが俺たちんとこに来てくれたらいいって思うよな…?」
「は?何当たり前のこと言ってんだよ」
「……だよな」
レイの眼差しが柔らかくレイアを見つめる。
「黒のキングが、獲物を逃すとか……ありえねーんじゃねえの?」
「そっちこそ……『戦闘狂(バーサーカー)』のお前が大人しすぎやしねえか?」
二人は再び目を合わせる。
「ちょっとーぉ、二人とも何ぼーっとしてんの?!早くしないと置いてっちゃうわよー?!」
遠くから声をかけてくるセスはちゃっかりレイアの手を握っている。
「わりー!今行くー!」
フェンリルが手を振りながら応じて、二人は歩き出した。
先を歩くレイアの髪が西日を反射してきらめくのを、目を細めながら二人は見つめて歩いていった。