第32章 last 4d【黒への招待】
和やかなティータイムからランチへとなだれ込み、夜はパーティをする、という黒の軍の幹部たちは、夜に備えてそれぞれの仕事についた。
ルカとシリウスがパーティの食事の準備、セスとフェンリルは手分けして領地の見回り、そしてレイが夜までの間レイアの相手をすることになったのだった。
「レイ、どこ行くの?」
とりあえずセントラルまで連れてこられたレイアは先をスタスタ歩くレイに早歩きで追いかけながら問うた。
「ん…ちょっと」
振り返らずに答えるレイの歩く速度は速い。
「……あ、待って……」
人通りの多い通りのためか、レイとの間に人が通り過ぎたり肩がぶつかったりしてしまう。
「あ、ごめんなさい……」
ぶつかった人に謝っていると、レイが戻ってくる。
「………ほら」
「えっ……?」
相変わらず読めない表情でレイはレイアの手を取る。
「あ………ありがとう………」
レイに手を繋いでもらいながら背後を歩くと、人がレイをよけていく為か快適に歩ける。
「………あのさ…」
「ん…?何?」
レイは少しだけ後ろを振り返る。
「お前……手汗すごすぎ」
「えっ?!やだ!!ごめん…っ」
レイアは慌てて手を離す。
赤面して俯くレイアを見て、レイはふっと笑みを落とす。
「ウソだよ………気にすんなって」
レイは再びレイアの手を取る。
レイは黒の軍のキングだ。いわば有名人である。
ただでさえ注目を浴びるのに、その有名人と手を繋いで歩くというのはやはり恥ずかしい。
「……何、緊張してんの?」
心の中を見透かされたような言葉にレイアはびくんと肩を震わせ、レイを見上げた。
「だ…だって……レイって有名人だし…みんな見てる気がして……」
「んなことねぇって。……ほら、こっち」
レイはだんだんと人通りの少ない通りへ入っていった。
少し開けた路地裏にたどり着くと、レイは物陰にひざまづく。
「みゃあ」
レイが来るやいなや、物陰から数匹のネコが現れた。
「わ!可愛い!」
レイアが駆け寄ると、一瞬警戒する素振りを見せるネコたちだったが、すぐにそれはなくなった。
「へぇ……似たもの同士はすぐ懐くのな」
「レイ、それどういう意味?」
意味深な笑みを浮かべて、レイはネコたちにおやつをあげていた。