第4章 1st Night 【フェンリル・ゴッドスピード】※R-18
「え?」
レイアは思わず聞き返す。
「…そもそも君なんか抱きたいと思わないけどねっ!」
ヨナの顔が赤く見えるのは
西日のせいだけではなさそうだった。
月小屋に到着した頃
日は落ちて、空は濃紺と紫のコントラストに包まれていた。
「じゃあ、明日の朝またここに迎えに来るから」
「うん」
ヨナはまだ何か言いたそうな顔をしていたが
そのまま馬車に乗りこんでしまった。
ヨナの乗る馬車が見えなくなるまで見送ると
レイアは月小屋の中へ入った。
月小屋の中は
相変わらず、これから起こる出来事を全く想起させることのない、落ち着く雰囲気のままだった。
だが、ベッドを見ると
さすがに昨日の出来事がフラッシュバックする。
しかも今日の相手は
…誰が来るのか分からない。
(あの場にいた黒の軍服を着た人のうちの誰かなんだろうけど)
ヨナは野蛮だの下品だの罵っていたけれど
一体どんな人たちなんだろう…。
(乱暴なこと…されるのかな)
考えていると余計不安がこみ上げてくる。
(そういえば…キッチンに何かあるのかな)
昨日は中をいろいろと見る余裕はなかったので
レイアはキッチンをのぞいてみた。
食べ物はほとんど置いていなかったが
お茶くらいは飲めそうな用意がある。
(まだ時間あるかな…お茶、いれようかな)
レイアはお湯を沸かす準備をし始めた。
……ちょうどその時だった。
外に、馬が到着する音が響いた。
(わ……来た……)
レイアの全身に緊張が走る。
(誰だろう……誰が来るのかな…)
不安と緊張で
手足の血の気が引いていく。
リリン…
可愛らしい呼び鈴の音が響く。
(これ…返事した方がいい……?)
しどろもどろになって慌てふためいていると
「開けるぞー」
通る声と共に、玄関の扉が開けられた。
「…よぉ、アリス!待たせたな!」
バイオレットブロンドの男は
明るい声に笑顔で入ってきた。
(あ、この人)
ガーデンでの記憶がよみがえる。
(…ぶっ放すって言ってた……えっと)
男はつかつか、とレイアの元へ歩み寄る。
「俺、フェンリル。フェンリル・ゴッドスピード」