第30章 13th morning 2nd【収束】
口を開いたのはレイだ。
「この月小屋の宴を通じて…君たちは誰を思い、何のために儀式を進めていったんだい?」
ブランの言葉に一同は複雑な表情を浮かべる。
「本当に相手を憎む思いでアリスを抱いたのかい?損得のみを考え、それ以外に何も感じずに?あるいは…最後の指名のためだけに彼女を籠絡しようと考えていた人はいるのかな?」
「そんな奴、いるわけないでしょっ?!」
セスが高らかに叫ぶ。
「こんな大変な運命背負っちゃってるアリスちゃんを少しでも傷つけないように…彼女のことを思ってたわよ!」
「……それ以上に、レイアは魅力的でもあったしな」
そう呟いて微笑んだのはゼロだった。
「ゼロ…っ」
レイアの顔が赤く染まる。
「この期間、両軍はアリスの力を平等に得るという目的以上に、彼女のことを大切に思い慈しむ気持ちを共有してたんじゃないのかな…」
ブランはふっと微笑みながら優しくレイアの頭を撫でた。
「彼女を大切に思う気持ちは…両者がクレイドルを思う気持ちそのものだと思うのだけれど…。同じ気持ちの者同士がいがみ合うことほど無益なことがあるのかな?」
「その通りだ」
(えっ………)
後方から聞こえた、威厳のある響く声。
それを待ち望んでいたヨナとゼロは反射的に立ち上がった。
「ランスロット様………!!」
やや乱れた軍服が激戦を物語ってはいたが、ランスロットは凛としてその場に立っていた。
「よくぞご無事で…我が主!」
「アモンは……アモンは討ったのですね」
ランスロットの口角が僅かに上がる。
「当然だろう」
その言葉に安堵の表情を浮かべたのは、赤の軍だけではなかった。
「……ランス、お疲れ」
シリウスが柔らかく笑んだ。
ランスロットも視線でそれに答える。
「先代の事件もあやつの仕組んだことだと自白した。よってこの件に関しては黒の軍の疑いは完全に晴れている」
ランスロットの深紅のマントが翻ると、彼は自分の席につき、レイアを見た。
「大事ないか、アリス」
「あ…はい…。ランスロット様は…」
「案ずるに及ばん。ブラン…続けろ」
「では」
ブランは眼鏡をくい、と指で押し上げ、全員を見据えた。
「これより、月小屋の主人指名に入る」