第30章 13th morning 2nd【収束】
「ほら!大丈夫なんかじゃないだろう!!今すぐ行ってくる」
ヨナが踵を返そうとしたその時だった。
公会堂へと降りる扉が開かれ、意外な人物が現れた。
「……これはこれは皆さん…何かあったんでしょうか」
「……ブラン!!!」
一同は、随分のんびりやってきたその白髪の紳士を一斉に注視した。
「遅い!今まで何やってたのよ!!」
「ブラン…大変だったぞ」
幹部たちがそれぞれやいのやいの言うその言葉をかわし、ブランはまっすぐレイアの元へやってくる。
「レイア……どうして君はそんな格好をしているんだい?まさかこの僕を出迎えるためにわざわざ服を脱いで待っていたなんてことはないよね」
「そんなわけないだろう、このエロウサギ」
「赤のクイーン、口の悪さが僕の同居人に似てきたね」
「レイアに手を出すなよ…俺は彼女の服をこれから用意しに行くんだから」
「それには及ばないよ、赤のクイーン」
ブランは手元にある大きなボストンバッグを開けると、中から綺麗なドレスを出した。
「わ…!」
ブランはふわりと微笑む。
「今日は『月小屋の主人』を決める大事な日だからね…君の美しさを更に引き立たせられるよう用意したんだよ。さぁ、これに着替えるといい」
「あ、ありがとうございます…ブランさん」
レイアはブランからドレスを受け取ると、着替えるために公会堂へと降りて行った。
「さて……なんだか全員揃ってもいないみたいだし、何かあったようなので事情を聞かせてもらえないだろうか」
ブランは改めて幹部たちに向き直った。
幹部たちは、長い長い夜から朝にかけての出来事を話し始めた。
「……そう、そんなことが」
ブランは真剣な眼差しでうなづきながら呟く。
「とりあえず公会堂の爆発は免れた。後は赤のキングの帰還待ち…」
レイの言葉に、ヨナが沈痛な面持ちで視線を落とした。
「きっとランスロットは大丈夫だよ。もうすぐ戻ってくるんじゃないかな」
ブランはまるでヨナを慰めるように、全体に向かってそう告げた。
「月小屋の主人…アリスはもう決めているようだし、今は『これからの話』を考えて行かないといけない段階のような気がするよ」
ブランは微笑み、公会堂へつながる扉へ視線を送った。