第30章 13th morning 2nd【収束】
時が止まった空間。
それは音のない空間だった。
音が一切無くなると
今まで音がそこにあったことに気づくことができる。
朝の時間。
ガーデンには鳥のさえずりがあったし
よく耳を澄ませれば
早朝の市場の声や、働き出す人々の声も微かにしていた。
その音が無くなるだけで
世界は不気味で怖い。
そしてもっと怖いのは
全てが動きを止めている中で
その「魔宝石」だけが
毒々しい光を放って脈打っているということだった。
(魔宝石の光だけ動いてるから、わかりやすいけど…)
レイアは目の前に広がる無数の光を見つめる。
「数……多すぎるよ…」
レイアはひとつひとつ手をかざしながら、魔宝石を無効化していった。
(これが全部爆発してたら…)
みんなもタダじゃ済まないし、クレイドルの人たちも…。
「早くしなきゃ…」
レイアはきゅっと口元を結んで再び光の元を追った。
5分という時間は
長いようで短かった。
しかし、時間を止めながらの作業は安全かつ確実に進めることができたのも事実だった。
公会堂、およびガーデンに設置された「時限式魔宝石」はすべて撤去することができた。
ほどなくして、傷を負ったエドガーを抱えたゼロとフェンリルがガーデンに到着し、カイルが介抱にあたった。
「ランスロット様は…!」
「お一人でアモンと戦っている…」
「ならば俺が…!」
慌てるヨナをゼロが制した。
「ヨナ……我が主は自らの手で決着をつけようとなさっている…俺たちが介入する隙はない。それに」
「それに…?」
ゼロは僅かに微笑む。
「我が主が…負けるわけないだろう」
ヨナの目がぱっと見開かれ、そして笑みに変わった。
「……そうだね、きっともう戻ってくるだろうね」
ヨナがそう答えた次の瞬間だった。
「…は……は…はっくしゅ!」
かなり大きなくしゃみの音がする。
「?レイア…?」
「……う…ちょっと寒い」
「…そっか、君ずっと毛布しか被ってなかったよね…もうお店が開いているかな…俺がよく行く店に用意させよう」
「ヨナ…大丈夫……っくしゅん!」