第27章 12th Midnight 拉致 ※R-18
セスがフェンリルの頭をひっぱたく。
「両軍幹部がぞろぞろ行ったところで意味ないでしょ!それに……いったん状況をボスに報告すべきだわ」
「ちぇ、せっかくぶっ放すチャンスだったのになぁー」
フェンリルは再び馬に乗る。
セスも同様だ。
「なんかまだ何かある気がするのよね……」
「女とオカマの勘は外れねーっていうからなぁ…」
「フェンリル、夜戦の得意なアタシに今喧嘩ふっかけるって意味分かってるわよね?」
2人は言い合いをしながら馬を走らせていった。
魔法の塔最上階。
透明な階段を登りきり、ヨナとエドガーが分厚い扉を蹴破ると
そこには異様な空間が広がっていた。
紫の垂れ幕が幾重にも重なった、ホールのような場所。
その舞台の中心に、黒づくめの人だかりができている。
「…なんでしょうあれは」
2人が侵入したことに、彼らは気付かない。
「………」
その中心から、微かに乱れた息遣いが聞こえる。
ヨナの顔が、徐々に青ざめていく。
「……まさか…」
「………や…めて……ぇ……っ」
聞こえるか聞こえないかの微かな声。
しかしヨナにとってはそれだけで十分だった。
青ざめたヨナの瞳は烈火のごとく火花を散らし怒りに燃えた。
サーベルを抜き、一気に走り込む。
「どけえぇぇっっ!!!」
黒づくめの集団が振り返るとほぼ同時に、ヨナのサーベルが敵をなぎ払った。
遅れて駆けつけるエドガーが確実に一人一人さばいていく。
敵襲があるとは思いもしなかったのか、丸腰の彼らは次々に床へ崩れ落ちた。
魔宝石を出そうとする者もいたが、あっという間に無効化され斬りつけられる。
そして
人だかりの中心に鎮座していたベッド上の光景に
ヨナは胸をえぐられるような痛みを覚えた。
「レイア……っ!!」
朦朧とした意識のレイアの上にかぶさる男を、ヨナは思いきり掴んで引きずりおろした。
そして床へ投げ飛ばすと、サーベルを高く掲げる。
「死んで詫びてもまだ足りない…それほどの罪を犯していることを、今から自覚させてやる…っ!」
「ヨナさん……っ!」
床に倒れた相手の手足を狙ってサーベルを振りおろそうとしたヨナを止めたのはエドガーだった。