第26章 12th Night【ヨナ・クレメンス】
レイアを抱える敵は振り向こうとするが、首元にサーベルの刃先が当てられていることに気付くと動くのを諦めた。
「目の前のヨナさんにばっかり注目していたら…こういうことになりますよね」
「くそっ…」
「エドガー!」
ヨナと対峙していた2人のうちの1人が振り返ってエドガーに斬りかかろうとするが、ヨナがそれを許さない。
「うぐっ!!」
「俺に背中を向けるなんて、随分甘く見られたものだね」
右肩を斬りつけられた敵は剣を床に落としその場に崩れ落ちる。
ヨナは相手の傷口目掛けて足で蹴り倒すと、もう一人の敵へ即座にサーベルを向ける。
「そろそろ分が悪いことを認識したらどう?早くレイアを解放して」
しかし、レイアを抱きかかえる魔法学者は再びくつくつと笑った。
「分が悪いのはお前たちの方だ。アリスは我らが手の内にある。赤のジャックよ……『外の掃除』がいささか手ぬるかったようだな」
「……っ」
次の瞬間
バンっっ!!
月小屋の玄関が蹴破られる。
そこからゾロゾロと、剣を構えた黒いローブの敵が押し寄せてきた。
「赤…ノ……くイーン……じャック……た…オセ……」
魔法で操られた無機質な動きの敵が
壊れた自動人形のように近づいてくる。
「クソっ!!」
背後の敵襲に気を取られたヨナに、敵の剣先がきらめく。
しかしヨナは間一髪で相手の刃を受け流す。
形勢は完全に逆転してしまった。
「では赤のクイーン、ジャックよ…せいぜい楽しむことだ」
レイアを抱きかかえた魔法学者は
赤い閃光に包まれていった。
「……待てっ!!」
エドガーの刃先が赤い閃光を斬る。
そこに手応えは、ない。
「レイアーーっっ!!」
敵の刃を受け止めながら叫ぶヨナの声が
空しく響く。
そうこうしている間にも
操られた無数の魔法学者たちが、月小屋の中へとはいってくる。
「うわー、エグいですね」
エドガーは口元だけ微笑みながら、冷たい眼差しを送る。
「ここは俺に任せて行って下さい、と言いたいところですが」
「そんなことさせないよ!」
サーベルが剣をはじき返す金属音と共にヨナが答える。
「では早急に片づけましょう」
エドガーが構えたその瞬間……