第26章 12th Night【ヨナ・クレメンス】
(な……なんて顔してるんだよ…)
レイアの瞳に煽られくらくらしながらも、ヨナは自制しながら優しく微笑んだ。
「レイア…俺は君から力も充分もらったし、明日は大事な日だ。今日はゆっくり休んだ方がいいよ」
ヨナはレイアの前髪をそっとかき上げ額にキスを落とした。
「…うん、そうだね。寝坊したら大変だもんね」
「俺は寝坊しないけどね。レイアは心配だから」
「そ、そんな平気だもん…!」
顔を赤くするレイアの頭をくしゃっと撫でて、ヨナはキッチンへと向かった。
「そうだ、何か良く眠れるお茶とかないかな…一緒に飲もうか」
「そうだね!それなら私が淹れ………」
レイアがヨナの後ろを追いかけようとしたその瞬間だった。
「………っ!!レイア!!!」
ヨナは一瞬生まれたその不穏な気配に、即座に身をひるがえした。
……が、遅かった。
レイアとヨナとの間に距離ができたその一瞬の隙に
赤い閃光が突如現れた。
「……きゃっ!!!」
「レイア!!!」
閃光が消えるとそこには魔法学者が3人姿を現した。
「くそっ……」
ヨナは即座に腰元のサーベルを引き抜いた。
それと同時にレイアの背後に回った一人があっという間にレイアの後頭部を叩き意識を奪う。
「何をする!!」
ヨナが斬りかかろうとすると、敵は意識を失ったレイアを抱きかかえ首元にナイフの刃先を当てた。
「動くな、赤のクイーン……アリスの命、どうなってもいいのか」
「黙れ!!貴様らだってアリスの命がないと困るんだろうが!」
「ほう…さすがキングの右腕。多少頭も切れるらしいな」
そう言うと、今度はその刃先を顔に向けてヨナを挑発した。
「……では顔をズタズタに切り裂いてやるか。命に別条がない程度にな…」
「………この外道が…ッ!!!」
ヨナの琥珀色の瞳が燃えるように怒りに満ち溢れていく。
レイアを抱え込む敵はくつくつと笑い、残りの2人は剣を抜いてにじり寄ってきた。
お互いの刃先が触れあいそうになる、まさにその瞬間だった。
「ヨナさん、随分演技がうまくなりましたね」
「なにっ?!」