第26章 12th Night【ヨナ・クレメンス】
パリーン!!!
窓が割れる音と共に
部屋の明かりがすべて消えた。
「…っ?!」
部屋を照らしていた魔宝石が全て無効化され
月小屋は暗闇と化した。
「どういうこと?!」
敵への警戒を解くことなくヨナとエドガーがあたりを伺う。
次の瞬間。
「うぐっ!!!」
ドサリ。
うめき声に、倒れる音。
ヨナとエドガーは何者かの侵入を確信する。
玄関口の方からも、次々と敵が倒されていく音が聞こえる。
やがて目が慣れ始め、暗闇の中に人影を確認した。
「誰だっ!」
ヨナは窓から侵入した相手にサーベルをつきつける。
「……アリスちゃんは、連れ去られちゃったのねぇ、一歩遅かったわぁ」
「その声は……」
その人物は血のにじんだサバイバルナイフをかざし、狂気の瞳を光らせた。
「……夜戦、得意なのよ、アタシ。こういうのゾクゾクしちゃうわ…」
「黒の10(テン)…」
まだ息のある者や、新たな敵が再び玄関から入ってくる。
「アンタたち助けるみたいな形は癪なんだけど、アリスちゃん絶対に助けてくれるっていうなら…この場はアタシの部隊が引き受けるわよ?」
「……」
ヨナが複雑な表情で琥珀色の瞳をたぎらせる。
「…致し方ありません。ヨナさん、大事なのはレイアさんの命です」
ヨナの脳裏にレイアの顔がよぎる。
今は、赤だの黒だのと言っている場合ではない。
ましてや階級の問題でもない。
レイアの命を助けること、ただそれだけを考えねば。
「……分かったよ、エドガー。ここは黒の10(テン)に譲ることにする」
「言い方は相変わらずだけど英断ね。早くアリスちゃん助けてちょうだいね」
ヨナとエドガーが力強く頷くと、セスは玄関にいる敵に斬りかかり隙を作った。
「行ってちょうだい」
2人は外へ飛び出し、それぞれの馬に乗ると、
魔法の塔を目指して全速力で駆けていった。