第25章 DAY12 明日への思い
お昼過ぎ。
セントラル地区で足りない薬品の買い出しに来ていたカイルは、
紙袋から溢れそうなほどお菓子を買いこんでいたエドガーと遭遇した。
「いねえと思ったらサボりか」
「違いますよ…徹夜の任務にあたっていたので、疲労回復と栄養補給です」
鮮やかな色のロりポップキャンディや、ジェリービーンズの瓶が紙袋からのぞく。
「カイルこそ、こんな時間にどうしたんです」
「明日はいよいよ月小屋の宴が終わるからな…何があってもいいように準備してんだよ」
「いい心がけですね……残念ですが、負傷者が出る事態に陥る可能性は、低くなさそうなので」
エドガーは柔和な笑みのままずばりと言い切る。
「…そうだろうな。ランスも何か隠してるみてーだし…まぁ事実はわかんねーけど、俺は俺の仕事をするまでだ」
「カイルが準備していてくれると思うと、こちらも思う存分腕を振るうことができます」
「おいおい、怪我する前提とかやめろよな?」
「怪我?この俺が怪我なんてするわけないじゃないですか」
エドガーが我慢しきれなかったのか、紙袋からキャンディを一つ取り出して口に放った。
「……大体、なんだかんだお前が一番危なっかしいんだよ」
「そんなに俺の剣の腕が鈍っているとでも?」
「いやそういう問題じゃねえ……」
カイルが目を細めて続ける。
「お前…皮肉めいたこと言って結局いつも泥かぶるじゃねーか」
「………」
エドガーの顔から一瞬笑みが消える。
しかしすぐにまたふっと笑いをこぼした。
「…やだなぁ、カイル。俺はいつだってわが身一番…いや、ランスロット様が一番ではあるけれど、他人をかばうようなお人好しじゃないですよ?」
その言葉にカイルもふっと笑った。
「……まぁ、そういうことにしといてやるよ」
そう告げて、そのままエドガーの横をすり抜けて去っていった。
「………」
エドガーは遠い目でカイルの背中を見つめる。
「あの若さで何なんでしょうね…あの鋭さ」
口の中で飴を転がしながら
エドガーもその場を後にした。