第25章 DAY12 明日への思い
夕暮れ差し迫る頃。
赤の兵舎、ランスロットの執務室には幹部が全員揃っていた。
「明日の朝、予定通り月小屋の宴が終わる。ヨナ以外の幹部は全員ガーデンに集合。ヨナは予定通りアリスと共に合流」
ランスロットが明日の流れを淡々と話す。
『何事もなかった場合』の、流れの話だ。
「アリスはおそらくヨナを指名する可能性が高い。その場合黒の軍がどのような判断を下すかは現時点では不明だが…ガーデンは中立のテーブルであることを忘れるな」
「承知しています、我が主」
ゼロが力強くうなづいた。
「……で、よー、ランス」
口を開いたのはカイルだった。
「なんだ」
「……アリス奇襲の件はどう見てるんだよ」
その言葉に、幹部全員がランスロットの表情に注視した。
……しかしランスロットは微動だにせず答える。
「直接の因果関係はないと思っているが」
「んなわけねーだろ?違うか?」
カイルは追従をやめない。
「ランス、お前が何か考えているなら俺たちにも教えろ…一人で抱え込んで解決しようとすんな」
「そうです…我が主」
憂いを帯びた声をあげたのはヨナだった。
「我々は誇り高き赤の軍の幹部。ランスロット様には叶わずとも何かのお力になることはできます」
隣にいるエドガーも柔らかく笑みながら頷く。
「もちろん、個別に依頼してもらっても構いませんよ。憶測の範囲を出ない以上、上に立つ者として確実な命を下せないのも分かりますから…
無駄足になりそうな面倒な任務は、全て俺がやります」
ランスロットは一瞬瞳を揺らす。
「俺だってランスロット様の右腕です…どんな困難も乗り越える覚悟です!」
ヨナが身を乗り出してランスロットに訴えた。
「……お前たちの気持ちはよくわかった。礼を言う」
ランスロットは半ば観念したようにふっと笑みをこぼしうつむいた。
…そして再び顔をあげ、幹部全員を見据える。
「…今回の件、誰がどう動くか推測の域を出ない。何が起きても己の信念と目的を忘れるな」
幹部全員がその言葉に頷く。
「深紅の血統を称えよ」
その言葉と共に幹部は解散していった。
エドガーとヨナを除いては。