第3章 DAY1 赤の兵舎
「……はい」
レイアは目を伏せて小さく答えた。
「…今宵から6日間、お前は月小屋で一夜を明かす。朝にはこちらから迎えの馬車を出す。6日目の夜が終わり次第そのまま黒の兵舎へ行き、今度は赤の軍が月小屋の主人となる」
「………」
頷くことも返事をすることもできず
ただレイアは俯いていた。
「俺は魔法を使えるから、月小屋の宴には参加しない。俺以外の幹部が参加する予定だ。俺たちは特にお前の魔法の力がなくとも勝算はある。…お前が嫌がるような行為は行わない」
「え……」
意外なランスロットの言葉にレイアは顔を上げて唖然とした。
隣に掛けているヨナが続ける。
「魔法の力を使わずに戦う野蛮な黒の軍は残念ながら…君の力も君自身も欲しがるケダモノたちだろうけど…赤の軍は彼らとは全く違うからね。
一緒にしないでもらいたいくらいだ」
「ヨナ……」
「まぁ…俺は力が手に入り、しかもそれが合法的手段なら喜んで受け入れますけどね」
エドガーは柔らかく言うが、それはすなわち「レイアを抱いて力を手に入れたい」と言っているに等しかった。
「………俺はそもそもこんなやり方は好まない」
「ゼロ、君は欲がなさすぎるよ?」
エドガーがたしなめた相手…ゼロと呼ばれる、金のメッシュの入った静かな印象の男は、レイアには目もくれずにぼそりと呟いた。
「まー…俺は女抱くより飲みてーからよ、とりあえず俺担当の日は酒だけ用意しとけよアリスー」
「……カイル、また禁酒の約束をするか」
ランスロットの静かな言葉に、カイルと呼ばれる不遜な態度の男は顔色を変えた。
「……冗談だよ」
「…とにかく。日中はしばらく我々と共に過ごす。何か困ったことや聞きたいことがあれば……そうだな、ヨナ」
「え?…あ、はい……」
いきなり指名され、ヨナは一瞬動揺する。
「アリスの身辺の世話はお前に頼もう」
「は、はい…分かりました」
ヨナは少しだけ不満そうな様子だったが
ランスロットの命令は絶対なのか、反論することもなく素直に受け入れていた。
その場が解散となり幹部は散り散りになると
早速ヨナはレイアに声を掛けてきた。
「じゃあさっそくだけど」
「え?」
「俺の部屋に…来なよ」