第23章 DAY11 奇襲・2
月小屋の前にはまだヨナの馬がつながれていた。
レイアは息を切らせ、髪を振り乱しながらそこへたどり着く。
(…どうしよ、降りれない…)
レイアは乱れた呼吸のまま、力の限り叫んだ。
「ヨナぁーー!!!」
すると、数秒もしないうちに月小屋の扉が開き、ヨナが飛び出してきた。
驚いた顔をしている。
「ど…どうしたのレイア」
身支度を整えたいつものヨナが、馬上で呼吸を乱しながら『一人で』乗っているのを見ると
ヨナの顔色は一気に変わった。
「ルカは…」
「……襲われて…ルカ……一人で…助けて…ヨナ…」
ヨナはその言葉を聞いた瞬間、ルカの馬に乗るレイアを馬上から下ろした。
そしてルカの馬を月小屋の前につなぐと
自分の馬にレイアを乗せて、出発の準備をする。
「大丈夫。俺が必ず助ける……つかまって」
ヨナはレイアを後ろから抱くように乗ると
手綱を引いて、全速力で走り始めた。
前方からは微かに血の匂いがしてきた。
その匂いがレイアの心を不安で締め付ける。
(ルカ…)
やがて黒いローブの人だかりが見える。
何人かは地面に倒れこんでいるが、
とにかく数が多い。
「レイア、手綱を!」
「え、はい!」
ヨナから渡された手綱を握ると
それと同時にヨナは馬から飛び降りた。
そして敵の集団めがけて
サーベルを抜きながら走る。
「ルカぁーーっっ!!」
敵が一斉にヨナを振り返る。
その中心には傷つきながらも応戦するルカの姿が見えた。
「……っ!」
ルカは一瞬目を見開く。
敵が攻撃の態勢を取るより早く、ヨナが間合いを詰めサーベルを振りかざす。
躊躇いなくヨナが敵をなぎ払い、次々に敵が倒れていく。
「ルカ!!無事か!!」
ヨナはルカに駆け寄った。
「……なんで、あんたが…」
「そんなこと言ってる場合か!怪我は…」
「……大したことない…あんたがいなくても…っ」
ルカの右腕は傷を負っているようだった。
「……貴様らよくもルカをこんな目に遭わせたな!!」
敵を見据えるヨナの目は、今まで見たこともないような色を放っていた。
そして、再びサーベルを振り上げた。