第23章 DAY11 奇襲・2
ルカはまるで羽があるかのように空を飛び
一気に敵との間合いを詰める。
「ジャックを舐めるな」
ルカの長剣が一瞬煌めきを見せたかと思うと
それをなぞるかのように鮮やかな赤が散った。
「……うぅっ…」
前列、数名の敵が崩れ落ちる。
「………っ!!」
レイアは馬上で息を飲んだ。
ルカは着地の瞬間に身を翻し、そのまま横の敵をなぎ払う。
反対側から魔宝石を掲げた敵から赤い光が放たれるのを
反射的に手をかざし防ぐと
そのまま長剣をかざし、一気に振り下ろした。
「ぐあぁっ!!」
鮮血が再び散り、地面に血だまりができる。
「行って!!レイア!!」
ルカは振り向かずに叫んだ。
その声にレイアは身体を震わせた。
(……う、動けないよ……)
恐怖に固まってしまう。
「行って!!お願いだ!!」
ルカは再び後ろからの敵に応戦する。
(数が多すぎる……このままじゃ、ルカが…!)
助けを呼ぼうにも、黒の兵舎までは随分距離がある。
第一、そこまで馬を走らせる自信はレイアに無かった。
(どうしよう……)
その瞬間、レイアの脳裏に『その人』の姿がよぎった。
(……やるしかない)
「ルカ、待ってて!!」
レイアは手綱を引っ張り、来た道を戻るように馬を走らせた。
「……レイア!」
「アリス、アリス、逃がすな…」
馬が走り出し、ルカと敵の声が遠のく。
(お願い…私を『あの人』のところまで届けて……)
レイアは手綱を握る手に力を込めながら
振り落とされないようにしっかりとつかまった。