第23章 DAY11 奇襲・2
ルカはレイアを馬に乗せたまま自分だけ地面に降り立った。
「……レイア、手綱を握ってて」
「え?」
レイアは言われた通り手綱を握った。
「何があっても……降りないで」
ルカはレイアの方を見ず、周りの木々や茂みに全神経を集中させているようだった。
急に嫌な予感がしはじめる。
(セスさんと一緒に居た時の…あれと一緒だ…)
ルカは背後に背負う長剣の柄に手を掛ける。
その時だった。
目の前に無数の赤い光が現れる。
(…魔宝石……!)
「ルカっ!!」
レイアが叫ぶと同時にルカは光の方へ手を開いてかざした。
パシッ!!
青白い無数の盾が広がり、ルカと馬に乗ったレイアの周りを囲む。
赤い光と青白い盾がぶつかり、白い閃光を放つ。
(きゃっ……!!)
レイアは腕でとっさに目を覆う。
…やがて白い光が消え、目が慣れてくると
目の前にはいつの間にか黒いローブに身を包んだ者たちがいた。
ざっと20人くらいはいるだろうか。
その全員が、手に魔宝石を持っていた。
「ル…ルカ……」
レイアの乗る馬の前で、ルカは長剣を抜いた。
黒いローブの集団は少しずつにじり寄ってくる。
「…アリスを、よこせ…アリスを、我が、手に…」
様子がおかしい。
壊れた自動人形のようにぶつぶつと呟きながら迫る様子は
同じ人間とは思えないような不気味さがあった。
「…レイア」
ルカが小さい声で呼ぶ。
「えっ」
「……俺が隙を作ったら、まっすぐ走らせて逃げて」
「…む、無理だよ!」
「大丈夫……その馬は…ちゃんとあなたを運んでくれる」
(違うよ…だってルカ……!)
レイアの心の中の呟きが聞こえたかのように、ルカは僅かに振り向いて笑みを見せた。
「俺は大丈夫…これでも『黒のジャック』だから」
そしてレイアの言葉を待たずに正面を見据えると
長剣を構えた。
ルカを包む空気が変わる。
「アリス、アリス、アリス……」
魔宝石が輝きを放つ。
「……かかって来い」
再び放たれる赤い光。
青白い盾に弾かれ、白い閃光となる。
その刹那、ルカが地を飛んだ。