第22章 10th Night【ヨナ・クレメンス】※R-18
「カイルは、魔法の塔の連中が赤の軍を勝利させるために黒の軍の脚を引っ張ろうとしてる、って言ってたけど…どこまでが本当なのか分からない」
「赤の軍を…勝たせるため?」
「ああ……表立って公表されてもいないしランスロット様自身も公言してはいないが……ランスロット様と魔法の塔はつながりがある」
「そ、そうなの?」
「一部の幹部には周知の事実だ…皆口にはしないけどね」
魔法の塔のことはあまり詳しくは知らないものの「公共機関」だと聞いただけに、レイアはヨナの言葉がにわかに信じ難かった。
「何を考えて奇襲だのしているのか全く分からないけれど…君を危険な目に遭わせるようなことなんて、あってはならないと思っているよ。実にアンフェアだ」
ヨナの言葉尻には怒りが滲む。
「ただでさえ君は……この世界に来てから…」
言い淀み、その代わりにヨナは切なげな視線を投げてきた。
「ヨナ……」
「……しんどくない?昨日……なんかエドガーがけっこう無理させたって聞いたから…」
確かにまだ身体のあちこちが少し重たく感じる。
疲労が抜けていないような感覚だ。
「顔色…」
「え?」
「……今は少し戻ってきたけど、さっきはあまり良くなかった」
(ヨナ…そんなところまで見てたんだ…)
ヨナは赤の軍の他の人たちとは、やっぱり違う。
黒の軍のみんなとも、違う。
ヨナは見ているところが違うし
ヨナの行動の先には必ず『想い』が乗っている。
(他の皆も優しいし良い人だけれど)
ヨナの想いはいつでもまっすぐで
そのまっすぐな気持ちは、いつだって大切な人のためだ。
レイアは改めて、部屋に散りばめられた飾りや用意されたスイーツの山(の跡)を見回す。
ヨナが一生懸命思ってくれていた気持ちが、そこから溢れてくるように感じる。
「ヨナ……ありがとう」
「えっ……」
「嬉しい」
レイアは満面の笑みで答える。
ヨナはその顔を見て、思わず顔を赤らめ視線を逸らす。
「……君ってたまにそういう…反則的な顔するよね」
「えっ?何?」
呟くように言ったヨナの言葉はレイアの耳には届かなかった。
「何でもないよ……ほら、少し横になって休んだら?俺はこっちにいるからベッド使いなよ」