第22章 10th Night【ヨナ・クレメンス】※R-18
「……わぁ……!!」
今まで見た中で一番大きなマカロンタワー。
大きなお皿に所狭しと並べられた焼き菓子。
色とりどりのプティフールたち。
「これ…どうしたの…?」
「全部君のために用意したんだよ?」
「これ…食べていいの?」
「当たり前の質問しないでくれる?」
レイアの目は自然と輝く。
ルカの作ってくれるスイーツも絶品だが、目の前に並べられたスイーツたちに心が躍らないわけがない。
「わ、私紅茶淹れるね!」
「ちょ、ちょっと!レイア!」
慌ててキッチンへ向かおうとするレイアの肩をヨナが掴む。
「紅茶くらい俺がもう準備してあるんだから、君は大人しくここに座りなよ?」
「えっ、ヨナ…紅茶……」
無理やりヨナに座らされたレイアは上目づかいにヨナを見つめる。
「……淹れられるの?」
「ば、ばかにしないでくれる?!」
顔を赤くしながらふくれっ面をしてみせるヨナの顔がひどく懐かしく思えて、レイアはふっと笑ってしまった。
そのレイアの笑顔を見て、ヨナも柔らかく笑った。
かなり大量に並べられていたスイーツは
あっという間にその殆どの姿が消えてしまった。
「ヨナって本当に甘いもの好きだよね」
「…レイアに言われたくないよ、君の方が沢山食べてると思うけど?」
「えっ?!ヨナの方が食べてるじゃん!」
「そんなことないよ……だってほら」
ヨナはふと身を乗り出し、レイアの口元へそっと指を添えた。
「えっ…」
「………こんなところにクリームつけた子に言われたくないね」
「……っ!」
レイアの顔がとたんに赤くなり、ヨナは目の前ですくい取ったクリームを舐める。
ヨナの煽るような視線が更にレイアの顔を紅潮させる。
「ねぇ、レイア」
着席して紅茶を飲み始めたヨナが切り出した。
「あれから…危ない目にはあってないよね?」
「えっ」
ヨナはおそらく奇襲の件を言っているのだろう。
「うん、昨日は何もなかったよ」
「そう……何か俺、嫌な予感がして」
「え?」
ヨナの表情は真剣だ。
いたずらに不安を煽っているわけではないことは分かる。