第22章 10th Night【ヨナ・クレメンス】※R-18
(今日は遅くなっちゃったな…)
月小屋を出発したのが遅かったせいか、全体のスケジュールがずれてしまい
この日月小屋に到着したのはすっかり日没を過ぎてしまっていた。
(ヨナ……久しぶりに会うんだなぁ…)
ゼロが主人を務めた翌日、セントラル地区ですれ違って以来
ヨナには会っていない。
ヨナと過ごした日々、ヨナとの距離感も
今となってはそれが現実だったのか疑わしいくらい
レイアの中にヨナの感覚は消えてしまっていた。
(ヨナ…もう私のこと忘れてしまったかな…)
「アリスちゃん?じゃあここでもうアタシは行くわね?」
月小屋の入口。
ヨナが乗ってきたであろう赤の軍の馬がつながれているのを確認すると、セスはそのまま引き返す準備をする。
やはり無用な接触はお互い避けたいのだろう。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。セスさん…ありがとう」
セスは柔らかく笑う。
「あの性悪美人でしょ?今日は…多分明日のお迎えもルカ以外の誰かがくるはずよ?」
セスの言葉にレイアは思わずふいてしまう。
「ふふっ……ですね。わかりました」
セスとレイアは顔を見合せて笑い合った。
そしてそのまま、馬車で去っていくセスを見送り終えると
レイアは月小屋の玄関を叩いた。
「……ヨナ?」
レイアが扉を開けると……。
「わわっ……!!」
レイアの視界に
ピンクや白や赤のバルーンが飛び込んでくる。
(えっ?!これは……何?!)
部屋のあちこちに散りばめられたバルーンにリボンの飾り。
ペーパーガーランドが壁に飾られ、まるでクリスマスか誰かの誕生日のような飾り付けだ。
「……ヨ、ヨナ…??」
おそるおそる部屋の奥へ声を掛ける。
「……レイア!遅いよ!」
「わわっ!」
キッチンカウンターの陰からヨナが突然姿を現し、レイアは驚きのけぞった。
「こ、これは何?!」
「何って……見て分からないの?」
「…ごめん、わからない……」
ヨナの顔が赤くなる。
「……連日大変な君をねぎらうために君の好きなスイーツを用意して待っていたんじゃないかっ!」
「へっ?」
そう言われレイアはテーブルの上を見ると…