第21章 DAY10 How many times?
時を少し遡り、夜明け前。
東の空が白みだした頃。
月小屋にはセスの馬が到着していた。
薄明かりの灯る月小屋の中へ、セスはゆっくりと足を踏み入れた。
「……早かったですね、黒の10(テン)」
ベッドの淵には、軍服を着てすっかり身支度を整えたエドガーが腰掛けていた。
「まぁ…余裕ね、赤のジャック」
乱れたベッドに横たわるレイアの姿が僅かに覗き、セスは眉根を寄せた。
「随分搾り取ったようねぇ?さすが、優しき悪魔とか言われてるだけあるわぁ…」
エドガーは温和な笑みを崩さない。
「昨晩の『主人』は俺だったわけですから…何をどうしようが何の問題もないと思いますけど?」
「まぁー……えげつなっ…」
セスの言葉になんの反応も示さず、エドガーは立ち上がると、無言のままその場を去り月小屋を出ていった。
エドガーの馬が去る音を背後で聞くと、セスはベッドに横たわるレイアの元へ行き、横に腰掛けた。
ぐったりと横たわるレイアの滑らかな肌が眩しいくらいにセスの目に映る。
「無理……したのね……アタシが言えるクチじゃないけど…」
両手首についた赤い痣が目に止まり、セスが眉根を寄せる。
「一体何したらこんなんなるのよ…趣味悪いわねっ」
すると、レイアのまつ毛が僅かに動いた。
「ん…んん………」
「あら………アリスちゃん…?」
セスがそっとレイアの前髪をかき上げた。
「………セ、スさ……ん………」
「エドガーは帰ったわよ。安心して?アタシは何もしないから……もう少し寝たら……?」
「………ん……セスさ……」
「えっ……?」
朦朧としたレイアは、セスの服の裾を無意識に握りしめた。
「……ここに……いて……お願い………」
セスは掠れた声で懇願するレイアにドキリと胸が高鳴るのを感じた。
セスの服を掴みながら再びまどろむレイアに
届くか届かないかの小さな声でセスは呟いた。
「……安心しろ…目覚めるまで……俺がそばを離れないからな……」
セスの柔らかい目がレイアに落とされ、
柔らかい朝日が窓からゆっくり差し込んできた。