第20章 9th Night【エドガー・ブライト】※R-18
レイアは日中起きた奇襲の件をエドガーに話した。
「なるほど……そうでしたか」
エドガーは何かを思案するように無表情のまま頷いた。
「それはおそらく魔法学者ですね…彼らもアリスの力に興味があるということでしょうか…」
「……魔法学者?」
首をかしげるレイアに、エドガーはそっと微笑みかけた。
「レイアは心配しなくても大丈夫ですよ。もし昼間の連中がここに来たとしても、俺がいれば絶対にあなたを守り切れますから」
「……」
エドガーは、いつもの含んだ笑顔ではなく『赤のジャック』としての顔つきでそっと微笑んだ。
「……さて」
エドガーは笑みを消し、そっと指先でレイアの頬を撫でた。
「…っ……」
レイアの瞳に警戒の色が宿る。
「……レイア、あなたは最終的に…ヨナを『主人』に選ぶつもりですか?」
「……っ、そ、それは…」
レイアの顔が一気に赤く染まる。
「赤の軍の傘下に入ることを決めているのならば、俺がここで無理強いすることもないので、ささっと済ませておしまいでもいいのですが……」
エドガーの指先は更にレイアの髪をひとふさ捉え、すっとすくい上げた。
「……ルカとも…仲がよろしい様子でしたね」
「…!」
馬車の中で抱きしめられた時のルカのぬくもりが身体によみがえる。
「クレメンス家は眉目秀麗だ…あなたが兄弟のはざまで揺れ動くのも分からなくはありませんよ?ですが…」
すくい上げたレイアの髪に、エドガーは唇を寄せる。
「黒の軍に入る可能性が少しでもあるなら…今夜俺はあなたの『力』を……最大限に絞り取るつもりです」
「………っ!!」
最後の一言に恐れを感じ、レイアが僅かに身を引こうとしたその瞬間、
エドガーはレイアの両肩を掴みベッドへと押し倒した。
「…きゃっ……!」
「…やはり、念には念を押すべきですね」
「や…めて……」
「大丈夫ですよ、レイア…カイルから薬をもらってきました」
レイアはカイルとの夜の時に飲んだ赤い薬を思い出した。
…記憶が殆ど残らない薬。
しかし、残らないというのもある意味怖い。
相手はカイルではなくエドガーなのだから。