第19章 DAY9 奇襲
昼食後、後片付けの担当だったレイアとセスは
キッチンに二人並んで皿洗いをしていた。
「ごめんなさいね~アリスちゃん…ほんとはアナタにこんな雑用させたくないんだけど」
「いいえ!皆さんのお手伝いしていた方が気がまぎれるし…楽しいです」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
セスは柔らかく微笑みながら皿洗いを進めた。
「そうだわ?黒の兵舎に居る間に一度はセントラルでまたスイーツツアー、しましょうね??」
「えっ?!いいんですか??」
「もちろんよぉー!パンケーキもいいけど、焼き菓子のお店やショコラバー、キャンディバーもあるわよ?」
「えぇっ!!い、行きたい…!」
レイアの目が輝く。
「決まりね!じゃあ明日行きましょ!」
セスは皿を洗い終え、蛇口をひねり手を拭いた。
レイアは積み上げられたお皿を丁寧に拭いている。
「こっちの世界にもショコラ専門店やキャンディのお店があるなんて…どんな味がするのかな…」
レイアが呟きながら微笑んでいると
「アリスちゃん……ちょっとお皿置いて?」
「えっ…?」
セスの声が僅かに低くなる。
レイアは手にしていた皿とふきんを置いた。
「どうしたの?セスさ……」
振り返ろうとすると、セスはレイアを自分の背後にかばうような体勢をとっている。
「なぁんか…変なの入ってきちゃったみたいねぇ…」
「……え…?」
セスの身体から殺気がみなぎる。
しん、としたキッチンには誰もいない。
しかしセスは『何か』を見ているかのように、微動だにしない。
「……じっとしててね…」
セスがそう告げた瞬間
目の前に赤い光が現れた。
「……あっ!!」
今まで誰もいなかったその場所に
突然黒いローブをまとった人間が3人現れる。
「……黒の10(テン)か…相手にならん」
小さな声が、そのローブの男たちから発せられる。
「あ?誰に口きいてやがんだコラ」
セスのオネエモードは完全に終わっている。
「アリスをこちらによこせ」
男たちは懐から魔宝石を取り出し、一斉にこちらへ向けてきた。
(な…なにこれ!)
「ナメんじゃねーぞ!!!」
セスが手をかざした。