第15章 DAY7 ようこそ黒の兵舎へ
「…ん、不安な顔、だいぶなくなってきたみてーだな」
「えっ…」
フェンリルのバイオレットカラーの瞳が満足げに細められる。
「お前、怯えたような顔してたから…セントラルで会った時もけっこう不安そうにしてたし…心配してたぜ」
「…あ、ありがとう…フェンリル」
「ほら、メシにすんぞ」
シリウスの声ではっとなったレイアはフェンリルから急いで距離を取ろうとする。
「で、誰が誰の隣だ?」
「アタシのとーなーりっ」
「はぁ?なんでだよ、抜け駆けすんなっつったろ」
再びフェンリルとセスが言い争い始めると
レイアの手首がすっと誰かに掴まれた。
「あ…」
レイアが振り返るとそこにはルカが優しく微笑んでいた。
「……あなたは、こっち」
そしてあれよあれよのうちにレイアはルカの隣に座らされる。
「はい、そこの二人座れ。もう解決したぞ」
「「え?」」
振り返ると、二人以外は全員着席している。
「ちっ…ルカてめー覚えとけよな」
「まったくもう…ルカってばズルすぎ」
「ふふっ……いつもこんなに賑やかなの?」
小さく笑いながらレイアはルカに尋ねる。
「……賑やか、って言うか、うるさいだけ」
伏せ目がちにルカは答えた。
「よし、全員そろったな。じゃあ食べ始めよう」
レイの声で、黒の軍での最初の日が始まろうとしていた。
日が傾き始めた頃、見回りから戻ってきたゼロのところへヨナがやってきた。
「やぁ、ゼロ。見回りの帰り?」
「ああ、そうだ」
ヨナの存在を特に気にすることもなく、ゼロはすたすたと歩いていく。
「ねぇゼロ、君って今日月小屋に行くんだよね」
「ああ、そうだ」
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
「どういう意味だ」
後ろをついてくるヨナに、ゼロは立ち止まって振り返った。
「なんていうかゼロって、レイアがここに居た時もあまり接点なかったようだし…」
「そりゃそうだ…ずっとお前と一緒にいただろう」
「いやそれはそうなんだけど、だからあまり彼女のこと知らないだろ?俺は良く知ってるから、特別にいろいろ教えてあげてもいいんだけど」
ゼロはふっと笑うと、挑発するような目を向けた。