第15章 DAY7 ようこそ黒の兵舎へ
朝日がすっかり辺りを照らし始めた頃
レイアはレイとともに黒の兵舎にたどり着いた。
「はい…ここが黒の兵舎」
レイが先に降りてレイアを抱きかかえるように降ろす。
赤の兵舎とはまた違った雰囲気だが
花壇には手入れの行き届いた花々が咲いており、心を和ませてくれる。
「よぉ…来たか、お嬢ちゃん」
「あ…シリウスさん!」
ちょうど花壇に水やりをしていたシリウスがこちらに気づき、声をかけてきた。
「シリウス、何か変わったことは」
「いや、特になし」
「…了解」
レイはすたすたと先に兵舎へ入っていく。
「…あいつ、夜すぐ寝たろ?」
「えっ?」
シリウスはレイアに耳打ちする。
「レイは夜ふかし出来ない体質なんだ…」
レイアはゆうべのことを思い出す。
…レイは「一番強い」と豪語していた割には
レイアがシャワーを浴びて戻ってくると寝息を立てていた。
(ふふ…可愛い)
レイアが髪をかきあげると、黒の軍の頂点に立つ「キング」とは思えないほどの、穏やかで柔らかい寝顔があった。
「……確かに、すぐ眠ってました」
レイアはシリウスと目を合わせ、くすりと笑った。
「…おい、ついてこねーと迷うと思うけど?」
「あ…今行くね…!」
遠くからのレイの声に、レイアは急いでその背中を追いかけた。
「いやーーーーん!!!」
談話室兼食堂にセスの黄色い声が響く。
「セス、騒ぎすぎ」
レイの忠告も届かない。
「いやーん!レイアちゃんよく来たわね~待ってたのよぉ!ささ、座って?」
「あ、ありがとうございます」
セスはちゃっかり自分の隣にレイアを座らせようとする。
「ちょっと待った、何抜け駆けしてんだっ!」
座ろうとしたレイアの腕が後ろから引っ張られる。
「あ…フェンリル!」
「久しぶりだなーレイア!会いたかったぜ!」
ふいに腕を引っ張られたせいで、レイアはフェンリルの腕の中へよろけて飛び込んでしまう。
「ちょっとぉーーーー!どっちが抜け駆けよっ!」
キーキー騒ぐセスを尻目に、フェンリルは腕の中のレイアの顔を覗きこんだ。