第15章 DAY7 ようこそ黒の兵舎へ
夜明け前。
いつもより早く目が覚めてしまい、
ヨナはベッドの中でみじろいだ。
(…今日から……黒の軍行きか……)
額に腕を置き、けだるく天井を見上げる。
ランスロット様にはレイアを籠絡するよう指示をされていた。
…でも一緒に時間を過ごしていくうちに
彼女の不思議な素直さに、目を逸らせなくなってしまっていた。
このクレイドルの平和を
赤と黒の行く末を
彼女一人が背負っている不条理さ
そして
そこから彼女を救えない自分の不甲斐なさに
ヨナは胸の奥を締め付けられるような感覚を覚えた。
レイアを赤の軍が手に入れれば
黒の軍は降伏するだろう。
もし武力を行使する結果となっても
レイアがいる限り圧倒的勝利は約束されている。
そして満月の夜が来れば
彼女は無事、元の世界に戻ることができるのだ。
ヨナはふと
レイアのいない世界に思いを馳せる。
(……一体なんなんだよ…このザワザワした感じは…)
苛立つように眉根を寄せたヨナは、寝返りをうって窓の方を見つめた。
東の空からの明るい光が
カーテンの隙間からこぼれ出していた。