第7章 ハイズと豚野郎と犬
官僚には逆らわない事が当たり前の世界だ。
「君には私の友達になって欲しいんだよね、もちろん、わんちゃんたちもね」
信じられるの?やっと豚に取り入ってそれが無駄になる?今の辛い生活が変わる?本当に?今後どうなるの?だって信じて、また捨てられたらどうしたらいいの?
わからない
大きな水飛沫を上げて勢い良く立ち上がる
揺れる瞳と震える唇は戸惑い
「うるさいうるさい!僕はそんな話に乗らない!施しは受けないからね!」
結局どうしたらいいか分からずに逃げてしまった
適当に拭いて服を着てしまったせいで貼り付いて気持ち悪い
駆け足からとぼとぼ歩き、そして膝を抱えてうずくまる
「大丈夫かハニー」
心配そうにジェイクか話しかけてきた
誰もいない廊下に座り込み、ジェイクとダレクの頭を撫でる
「よく分からないよ・・・信じていいの?」
独り言のような小さな声でジェイクに聞いたのか自分に聞いたのか
「こんな所でどうしたんだい?」
ハッと顔を上げる
でっぷりと肥えた豚の官僚が後ろ手にニヤニヤ笑いながら近づいてきた
ハイズの背中が熱くなる
そう、昨日鞭で叩かれた背中が熱い
「ゴードル様・・・いえ、なんでも・・」
ミスティリーフが居なくなって、その従者が住んでいた豚の屋敷にはハイズたちしか居なくなった。
その日のうちにこのゴードルに宿代をせびられた。当然払うものは僕の体で。
怯えた演技はお手のものだったはずなのに。
鞭で叩かれた背中が熱い。勝手に尻尾が下がる
「今日はなにが食べたいかな?ご馳走を用意するよ。行くところなんて無いだろう?好きなだけ暮らしなさい」
優しい言葉に喉がきゅー、と鳴った
ダレクが唸ろうとしてジェイクに止められる
そう、どうしようもないのだ。
本当は一発で殺すことも出来るが、なんの解決にもならない。むしろ最悪な方法だ。
それはこの三匹、分かっている。
ダレクは頭にあの異世界からの神子を思いながら、ハイズを慰めるように足元にすり寄った