第3章 1日目
一緒に街を歩いていて、気づいたことがある。
エースは人に好かれる。行くところ行くところでエースの人柄を買われてたくさんのオマケをもらう。
「はー買った買った!」
「でもこんなに食べきれないわよ」
リラははぁっとため息をついた。エースは楽しそうにニカッと笑った。
「おれが食うから平気だ」
「そういう問題じゃないでしょ?いっぺんに食べられるのあなた」
「おう!このくらいなら余裕だな!」
呆れた。
リラは言葉には出さずに大きくため息をついた。
小屋に着き、買った荷物を部屋に置いてキッチンへ向かう。
リラは自分が作れる最大量の料理を作って出した。エースはそれをどんどんと胃袋へ流し込んで行く。
「よく食べるわね」
「お前のメシが美味いからな!」
「お世辞?」
リラは鼻で笑った。エースも嬉しそうに笑った。
「お前初めて笑ったな?」
「えっ?……あ」
言われるまで気づかなかったリラは、思わず頬を両手で包んだ。
「笑ってた……?」
「ああ、笑ってた」
「そっ……か」
リラはふにゃりと顔を崩した。
他人の前ではもちろん、仲間の前でも笑うことなんて滅多になかったのに。