第3章 1日目
「笑ってたほうがお前らしいな」
エースはニカッと笑った。リラは足りなくなった料理をまた作り始める。
ふと、エースはテーブルの近くにある棚に目を向けた。棚の上は綺麗に整頓されていて、細かなインテリアも飾ってあったが──1つだけ、埃をかぶっているのがあった。
エースは思わずそれを手に取った。リラも気づいたのか表情を変えた。
「それね……父よ」
「オヤジ?」
エースにとっての父親は白ひげただ1人。白ひげ以外の父親など、考えたこともなかった。
「ええ。海兵だったの」
「だったってことは、今は……」
「……海で死んだわ」
エースは顔を険しくさせた。
リラは取り繕うかのように笑った。
「そんな顔しないで。──ただの海難事故よ」
端的に述べたことで、逆に彼女の言ったことが嘘だと分かる。彼女の父親は──海賊に襲われたのだろう。それで殉職した──
「父はいつも言ってた。『おれは海賊としてのロジャーや白ひげは知ってる。でも1人の人間としてのゴール・D・ロジャーやエドワード・ニューゲートは知らない。海賊としてのあいつらを追うことはあるけれど、人間としてのあいつらを追うことはない』ってね」
私には分からない、とリラは呟いた。
「海賊はどこまで行っても海賊。そう思ってたから。でももしかしたら──ロジャーや白ひげも、誰かを愛したことがあるのかしら……って」