第9章 地獄の終わり
と、ふわり……と暖かい“何か”がリラの体を包んだ。
「……?」
弱々しく顔を上げると、そこにはエースがいた。
「エー……ス?」
いきなりの登場にリラはパチクリと目を瞬かせた。
『悪ィな、おれ今実体ねェんだ』
「そういうことじゃなくて……なんでここにいるの?だってエース死んだはずじゃ……」
今目の前で、起きるはずのないことが起きている。それも、死んだ人が目の前にいるなんてファンタジーが。
「エース……?本物?」
『本物だよ。それよりもリラ!』
エースの顔がしかめられた。何かと思い、身構える。
『なーにが“自分勝手な嫌な女”なんだよ!本当に自分勝手だったら海賊を家に上げるか!?メシ作ったり色んな話してくれたりするか!?』
ものすごい剣幕で言われ、リラは圧倒されてしまった。どうやら本気で怒っているらしい。
「え……だ、だって私戦争の時、自分の気持ち優先で動いちゃって……エースやルフィ君の気持ち考えてなくて……」
『だから何だよ?』
そう言われ、リラは逆にきょとんとしてしまった。
『あんな切羽詰まった状況で人の気持ち考えながら動くなんて出来っかよ。マルコ達やルフィだって自分の気持ち優先で動いてたろ』
「そ、それとこれとは話が違……!」
『違わねェよ。おれはそれが嬉しかったんだから』
とくん……と胸が鳴る。
『それにお前はルフィのこと守ってくれたろ。体に傷つけてまでよ』
「でも……!私は結局1番救いたかった人を守れなかったのよ!?」
『仕方ねェよ。おれはああなる運命だったのさ』
「運命って……!」
『生きろ、リラ』
エースが真面目な顔になった。
『お前がおれを忘れない限り、お前が生き続ける限り、おれはお前の中で生き続ける。誰と恋愛しようが誰の子供を産もうが、お前の心の中に少しでもおれを留めてくれれば、おれはそこで生き続ける』
「そんなファンタジーみたいなこと……」
リラはくすりっと笑った。