第9章 地獄の終わり
そしてここは、グランドライン後半の海──新世界。
「赤髪……なんと礼を言ったらいいか……」
マルコが白ひげとエースの墓を見上げながら言った。シャンクスは薄く笑い、「つまらねェことを言うな……」とマルコを窘めた。
「──じゃ、おれ達はもう行く……」
「行っちゃうの?」
思わずリラが言うと、シャンクスはニッと笑って言った。
「なんだリラ、おれと離れるのが寂しいのか?」
「そういう訳じゃないけど」
バッサリそう切ると、シャンクスは目に見えてしゅんとした。
「あーもう!あんた仮にも一船の船長でしょお!?……まだ私ここに残りたいから……船も欲しいし」
そう言うと、シャンクスはまた笑った。
「小舟ならやるよ。まだ言い切ってないことあるんだろ?言ってやれ」
そう言うとシャンクスは颯爽と船に戻った。
「おれも戻ってるよい。話し終わったら呼び来い」
マルコが気を遣ったのか、席を外してくれる。リラは礼を言ってから、手に持っていた花束をエースの墓の前に供えた。──紫のライラックと、赤いハイビスカス。
ライラックはリラの花。
ハイビスカスはエースの花。
「ねぇエース……?」
エースの墓の前に座り込み、ポツリポツリと墓に向かって話し始める。
「私、あなたに隠し事してた。海兵だってことと、雪女だってこと」
ふ、と息を漏らす。
「エースに嫌われたくないって、その一心で隠し通してた。馬鹿だよね。エースがそんなことで人を嫌うような人じゃないこと、知ってたのに」
体育座りをした膝に、顔を押し付ける。
「ごめんね……ずっと、黙ってて。本当なら、エースのこと助けたかった。ルフィ君にも、堂々と手を貸してあげたかった。でも──どこかで怖がってた。エースにバレたらどうしよう、嫌われるかもしれない……って」
リラは乾いた笑みを浮かべた。
「結局私は、自分のことしか考えてないのよ。自分勝手な……嫌な女」
リラはまた「ごめんね」と繰り返した。
「私最低だね。それで中途半端に手を出して、エースをみすみす殺されちゃって……。ごめんね、ごめんなさいエース」