第9章 地獄の終わり
『ファンタジーは嫌いなのか?』
「ううん、別にそうでもない」
ふふっと笑う。エースはふわりとリラを抱きしめた。
「……凍らないんだね」
『おれァメラメラの実を食ったからな。それに今は実体がねェって言ったろ』
「そっか」
リラも実体のないエースの体を抱きしめ、言った。
「エース……」
『ん?』
「好きだよ、ずっと。死ぬまで……ううん、死んでもあなたを好きでいる」
エースが驚いた気配がした。
「何?」
『いや……おれも好きだ。……海賊王の息子ってこと、黙ってて悪かったな』
エースがそう言ったあと、2人でくすくす笑いあう。
「やだ、私たちお互いに隠し事してたんだね」
『似た者同士ってか』
ふふっと笑い合い、エースがはた、と気づいたようなそぶりを見せた。
『そろそろ戻らねェと。成仏しちまう』
「あら、あなたでも成仏するのね。手伝ってあげましょうか?」
『やめろ。おれはまだ兄弟達を見守る役目が残ってんだよ』
エースが慄き、リラが笑う。
「じゃあ……ね」
『おう!またな!』
まるでいつかの別れの時のよう。
エースはあの時と何ら変わらない笑顔ですうっと消えようとする。
「……っ、私が今後好きな人できなくなったらエースのせいだからね!責任とってよ?」
最後にそれだけ言う。本当ならもっと言いたいことはあったのに、うまく言葉にできず、結局いつもの憎まれ口しか叩けない。
だが、エースはニッと笑ってくれた。
そして最後に──ふわりとキスを落とし、エースは本当に消え去った。リラの手元に彼の愛用していたバングルを落として──