第8章 ポートガス・D・エース
パタパタっ……と落ちる赤いものは血。その血の持ち主は──
「エー……ス?」
マグマの蒸気が晴れ、確認できたその人物は──エースだった。彼の腹部を赤犬のマグマの拳が貫いていた。
「エースがやられたァ〜〜!!!」
戦場に響く怒号。
リラは何が起きたのか分からず、ただ呆然とするばかりだった。
「……ごめんなァ……ルフィ……リラ……」
とさっ……とルフィに倒れこむエース。
「エース!急いで手当て……」
「ちゃんと助けて貰えなくてよ……ハァ……すまなかった……!」
「……!」
エースにしては珍しい、諦めたような物言いだった。
「……っ、何言ってんの!?誰かっ……急いで手当てをっ……」
リラが立ち上がって船医を探そうとするが、エースがその手を掴んだ。
「無駄だ!!…….ハァ……自分の命の終わりくらいわかる……!内臓を焼かれたんだ……ぜェ……もうもたねェ……」
「嘘……」
リラは愕然とした。
「私の……せいだ」
「ぜェ……お前のせい、じゃねェよ……」
ボロボロと涙をこぼすリラ。
「だから……聞けよルフィ……リラ……!」
「……何言ってんの……?エース死ぬの……?」
「……い……約束したじゃねェかよ!お前絶対死なねェって……!言ったじゃねェかよエースゥ~!!ウ……」
乾笑いするリラ、そしてルフィが叫ぶ。
「……そうだな……サボの件と……お前みてェな世話のやける弟がいなきゃ、おれは生きようとも……思わなかった……。誰もそれを望まねェんだ、仕方ねェ……!」
リラは、前にエースが言っていたことを思い出した。
鬼の子として忌み嫌われていた海賊王の息子。エースはその逆風の中、生きてきたのだ。──1人で。
「心残りは……一つある……お前の……夢の果てを見れねぇ事だ……ハァ……だけどお前なら、必ずやれる……!おれの弟だ……!」
エースはどんどんと顔色が悪くなっていく。凍らせて止血しようにも、エースがそれを許さない。
「……昔……誓い合った通り……おれの人生に……悔いはない!」
「……嘘だ!嘘つけ!」
「ハァ……ハァ……嘘じゃねェ……!」