第8章 ポートガス・D・エース
「この時代の名が!!“白ひげ”だァ!!!」
エースは赤犬めがけて彼の代名詞とも言える火拳を放った。
だが、それは赤犬の拳で弾かれる。
「うわァァ!!」
「「エース!」」
ルフィとリラの声がハモる。ルフィは驚いたようにリラの方を見たが、リラはふいっと顔を背けた。
「ロギアじゃいうて油断しちょりゃあせんか?お前はただの“火”わしは“火”を焼き尽くす“マグマ”じゃ!ワシと貴様の能力は完全に上下関係にある!」
「!!?」
エースのみならず、周りの人間も同時に驚いた。
「“海賊王”ロジャー、“革命家”ドラゴン!この二人の息子達が義兄弟とは恐れ入ったわい……!貴様らの血筋はすでに“大罪”だ!誰を取り逃がそうが、貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!!よう見ちょれ……」
赤犬はルフィめがけて拳を振るった。
「……!おい!待て!」
エースがルフィを守ろうと走る。その刹那、ルフィの目の前に誰かが立ちはだかった。
「……な!?」
「くっ……」
エースよりも早く動き、ルフィを庇ったのは──リラだった。
背中に赤犬の拳を受け、苦痛の表情を閃かせるリラ。彼女が背中に背負った“正義”に穴が空いた。
「リラ!!!」
スズシロが駆け寄ろうとするが、リラは手振りでそれを制した。
「リラ……貴様どういうつもりじゃ……。わしゃア貴様のことは正しい海兵じゃと見込んどったがの……?」
「……っ、ご、ご期待に添えなくてすみませんね……。私は、大切な人の大切な人を守りたいと思っただけ……。海兵じゃなければ、堂々と守れたんだけど……ね」
リラは鈍く痛みが続いている背中を庇いつつ軽口を叩いた。赤犬はリラの言葉にイラついたのか、拳を再びマグマ化させた。
「アァ……もういいわい。正しくもない兵は海軍にゃアいらん……!!!」
「……っ!!!」
体が万全なら避けられるかもしれないけど、今は背中が痛すぎるし、後ろにはエースの弟──ルフィ君がいる。避けるわけにはいかない。
「リラッ!避けろォ〜〜!!!」
ごめん、スズシロ。さすがに無理だ。ここで死ぬのかな。そう思った。ふわり、とリラの好きな香りがした。
この香りは──
パタパタっ……と赤いものが見えた。