第2章 出会い
──その日、リラは休暇で故郷に戻ってきていた。
グランドラインにある、冬島。
「あらリラちゃん!帰ってきてたのかい」
「久しぶりおばさん。相変わらず寒いねーここ」
「まぁ冬島だからねェ」
ご近所さんと相変わらずの挨拶を交わし、リラは集落から少し離れた小屋に入った。
暖炉に火をつけて着替えを済ませる。
「あー寒っ」
リラはコートにマフラー、手袋耳あてという完全防寒で外に出た。
小屋の隣に建てた小さな温室に入る。厚着していると少し汗ばむくらいの暑さだ。
「……よかった、まだ枯れてない」
リラが育てているのはサウスブルーに咲く花、ハイビスカス。冬島で育ったリラは、南の島に強い憧れを抱いていた。だが仕事柄勝手に行くことはできないから、せめて花だけでも、と思い育てている。
しょっちゅう帰ってくるのはこの花が気になるから、そしてこの島を心配しているからだ(もちろん島の方が心配である)。
「今回も異常なしっと……」
リラは背伸びをして温室を出た。温室から外に出ると温度差がすごい。
「あ、そうだ港──」
港にも誰かいるかもしれない。集落の人たちかもしれないし、仲間かもしれないが。
だが、もし島に危害を加える者なら──即殺す。リラは神経を研ぎ澄ませながら港へ向かった。
そう思いながら港を覗いてみると、1人乗り用のボートらしきものが一つ。
そこには男が1人乗っていた。
「……誰?」
集落の者でも仲間たちでもない。リラは警戒心丸出しで訊いた。
「あァ、驚かせちまったか?悪ィな」
「あんた誰って訊いてんだけど」
リラがじろっと睨みながら低く言うと、男はニッと笑いながらこう言った。
「おれはエース。白ひげ海賊団2番隊隊長だ」
──背筋が冷えた。