第6章 最終日、そして運命は非情に廻り始める
やがてガープの部屋の前に着いた。コンコンコンっと軽くノックすると中から太い声が聞こえた。
「リラか!入れ!」
ガチャリとドアノブを回して部屋に入る。ガープは安定でせんべいをかじりながら茶をすすっていた。
「なんじゃ、スズシロもおったのか」
「ちょっ、ガープさん!!?失礼ですよ!?仮にも乙女に向かって!」
「あんたの場合は本当に仮だからね」
「リラっ!」
あはは、と一頻り笑った後、ガープが真面目な顔をした。
「まぁスズシロもいるなら話は早いのぅ」
「何なんですか?中将2人もここに呼び寄せた意味は」
スズシロが怪訝な顔をする。先程までのふざけた表情とは一変、今はもう海軍本部中将の顔だ。
「……火拳のエースが捕まったことは知っているな?」
ガープの問いに2人で頷く。
「火拳のエースの──公開処刑が決まった」
「「!!?」」
スズシロと2人で目を見開いた。顔を見合わせ、リラが口を開いた。
「そんなことしたら……!」
リラとしては想定の範囲内だが、自分で想定しているのと上司から言われるのとでは全然違う。
ガープは沈痛な面持ちで頷いた。
「……白ひげ海賊団との──戦争になるだろう」
リラとスズシロは同時に目を眇めた。まさかこんな形でエースの“家族”に会うことになるなんて。
「日時はいつになるんですか?」
スズシロはさすがと言うべきか、こんな時に感情を表にはっきり出すことはしない。
「分からん。決まればお前達にも確実に連絡は行くだろう」
「来なくてもいいですけどね。仕事が増えるの嫌だし」
しれっとそう言い放つと、ガープのげんこつが落ちた。
「……〜〜っ、いっ……たぁー……」
思わずしゃがみ込む。リラは殴られた頭を抱えてしばらく悶絶し、上目遣いにガープを睨んだ。
「ガープさん酷い!私何も悪いこと言ってないじゃないですかぁ!」
「アホウ!中将たる者がそんな怠惰でどうする!」
ガープに久しぶりのげんこつをもらい、リラはぶうっと膨れっ面をした。