第6章 最終日、そして運命は非情に廻り始める
本部へ到着するや否や、海軍の中で数少ない気を許せる同期がリラを出迎えた。
「リラ〜!おかえり!」
「スズシロ……鬱陶しいからやめて」
リラの同期であり友達のスズシロだ。リラがあしらうとスズシロはぶうっと膨れた。顔立ちが整っているため、そんな顔も可愛く見えるから得だ。
「いーじゃない、せっかくリラに会えたんだしぃ」
「今はそれどころじゃないでしょ」
バッサリと切り捨てる。
「私ガープさんに会いに来たのよ」
そう言うとスズシロはニッと笑って、「ガープさんなら部屋にいるわ。あたしも話聞きたいし一緒に行こ」と言ってリラの前を歩き始めた。
「で?どうだったのよ」
「何が?」
スズシロがキラキラした目で見つめてくるが、何のことかとしらばっくれる。まぁだいたい言いたいことはわかるが。大方いい男はいたのか、というところだろう。
「もーう!分かってるくせに」
「いった!」
ばしっと背中を思い切り叩かれる。不意をつかれたせいで思いの外鈍く痛みが背中に弾けた。
「あっ、ごめん!大丈夫?」
「あんたね……一応私女よ?手加減てもんを覚えなさいよ、いい加減」
「ごっめーん、あたし女子の力加減なんて分かんないからぁ」
「なーにが“あたし”よ。本当は男のくせに」
じろっと睨んでそう言ってやると、スズシロはきゃーっと言って笑った。
そう、彼女──いや、彼、スズシロは実は男なのだ。見た目も声も完璧と言っていいほど女なのに、力は並の男よりも強い。
「ほんっと恐ろしいわあんた」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
唯一の気を許せる同期。リラにとっては、こんな風に憎まれ口を叩き合っていても彼がいることで少しは安心するのだ。