第6章 最終日、そして運命は非情に廻り始める
エースと別れてから数日経った。
リラはまだ休暇が残っているため、1人小屋の中でソファーに座って本を読んでいた。
──2人でいると窮屈だったのに、今は広すぎる気がする。
「……変なの」
リラはボソリと呟いた。
と、ソファーの隣にあるサイドテーブルに置いていた電伝虫がプルプルプル……と鳴った。
「はい?リラですけど」
『リラか!今家か?』
やけにでかい声にリラは思わず電伝虫自体を遠ざけた。
「ええ。……何かあったんですか?まさか休暇切り上げとか」
『すまんが休暇切り上げて帰って来い!』
「嘘でしょ」
『──緊急事態だ』
──頭が冷えた。休暇切り上げにむくれている場合ではない。
「何かあったんですか?」
『……“火拳のエース”が捕まった』
「──、」
いつものリラの頭ならすぐに返事ができた。それが出来なかったのは、別れ際の彼を思い出したから。
『おれは死なねェよ』
火拳のエースが捕まったとなれば、公開処刑は免れない。どうする?止められるようなものじゃない──
「……公開処刑するんですか?」
『そりゃあするだろう』
「そんなことしたら……!」
『とにかく戻って来い、本部で話そう』
有無を言わさぬ物言いにリラは沈黙した。
「……分かりました、ガープさん」
リラは電伝虫をかけて来た上司に向かって言い捨て、電伝虫を乱暴に切った。