第5章 3日目
雪祭りが始まった。
子供たちはみんな走り回り、年寄りも保護者もみんな微笑ましそうに見ている。
ただ1人──リラを除いて。
「リラ」
大きな針葉樹にもたれていた彼女に声をかける。彼女はビクッと体をすくませたが、すぐに笑顔を貼り付けてこちらを振り向いた。
「エース」
どうしたの?お祭り見ないの?
彼女はそんな風に問いかけてくるが、エースは何も答えない。
「……お前、おれに隠してることあるだろ」
しかも、とても大きなものを。
リラはくすっと笑った。──少し哀しそうに。
「おれじゃ……一緒に抱え込むには頼りねェか?」
「そんなことない!」
リラは即答で答えた。だが、その後の答えは尻窄みになる。
「頼りないとかそういうんじゃなくて……ただ──」
「ただ……?」
リラはそこで言葉を切った。重たい沈黙が2人の間に流れる。
やがて、リラが口を開いた。
「ただ……あなたに嫌われるのが怖いだけ」