第4章 2日目
リラは小屋に着くなり走って温室に駆け込んだ。
真っ赤なハイビスカスが咲いている横のプランターに、今日もらった苗を植える。
他の苗も土が入っている鉢やプランターに植え替えた。
と、エースがハイビスカスを指して言った。
「これハイビスカスか?」
「あら、エース知ってるの?」
「そりゃあ、まァな」
エースのハイビスカスを眺める目が遠くなった。
リラはそんな彼を微笑ましく見つめた。
「何か思い出でもあるのかしら?」
からかい半分に訊いてみた。だがエースは首を横に振るだけだった。
「私は南の島は好きよ」
唐突な言葉に驚いたのか、エースはリラを見つめた。
リラはエースの目を真っ直ぐ見つめた。
「冷たい、灰色の世界じゃないもの。熱くて、カラフルで、みんな楽しそう」
リラはハイビスカスを見つめた。
「熱く、熱く、私の心を溶かしてくれる……そんな世界」
「熱でもあんのか?」
エースは割と本気でリラの額に手を当ててきた。リラはハッとして「離して!」と叫んだ。
エースは慌てて手を離す。
「……私に触らない方が身のためよ?」
「何だそりゃ。『おれに触れるとケガするぜ』ってヤツか?」
「まぁ、そんなところね」
リラは笑ってそう流した。
──リラの場合、諸刃の剣だけれど。