第3章 1日目
「……エースは海賊なんでしょ?」
リラが不意に訊いてきた。エースは頷く。
「エースは誰か大切な人はいるの?」
考えるまでもない質問だった。仲間たち──マルコ、ジョズ、イゾウ、オーズJr.……。そして、エースを救ってくれた白ひげ──オヤジ。
そして弟のルフィ、今は亡き親友のサボ。
みんな、エースの大切な人。そして愛する者たちだ。
指折り数えてそう言うと、リラはふっと笑った。悲しみを帯びたその笑顔は、なんだか胸の奥にツーンと響いた。
「いいね、エースは……。人を愛することができて」
その声の響きは、覚えてもない母親を彷彿とさせた。
灰色の長い髪、病的なまでに白い肌。
気づけばエースは、リラの身体にそっと触れていた。瞬間、リラはバッと身体を翻した。
リラは無意識のうちにやっていたらしく、すぐ我に返ったような顔をした。
「ご……ごめんね。私冷え性だから……冷たいかなって」
「そうか……」
彼女は目をそらしながらそう言った。
あ……これ嘘ついてるな。何となくわかった。嘘の苦手なルフィと一緒にいたから余計によく分かる。
出来ることならリラの抱え込んでいるものを全て受け止めてやりたいけれど、リラはそれを態度で拒否していた。
まるで、冷たい氷の壁が2人の間にあるかのように。