第3章 1日目
リラは暗い雰囲気を取り払おうと、努めて明るい声を出した。
「ご……ごめんごめん、辛気臭くなっちゃったね。洗濯するから暖炉に火ィつけといてくれる?」
「おう、わかった」
エースも明るい声を出した。
洗面台に向かいながら、リラは大きく息をついた。
……バレなくてよかった。
もし、“あのこと”がバレたら、いくらエースだって気味悪がる。そこまで考えて──ふと思った。
なんでエースに“嫌われたくない”って前提で考えてるの?
「──不思議」
リラは思わず呟いた。
出会った頃はあんなに警戒していて、しかも白ひげの船の者だって知ってものすごく毛嫌いしていたのに。
私ってこんなに単純だったかな?ううん、違う。
エースの人柄だ。
エースは誰に対しても分け隔てなく、そして人懐こく接していた。だから閉鎖的な住民たちもエースには笑顔を見せる。気がつけばリラも、仲間にすら見せない笑顔をエースに向けている。
いつの間にかエースはリラの凍った心の片隅に入り込んでいたのだ。
「でも……私には」
あなたに言えない“秘密”がもうひとつ──