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(R18) Lv.5 (HQ)

第1章  Lv.5



「──だからね、鉄朗」
 及川さんはあくまで笑みを絶やさない。軽やかに、それでいて、艶やかに。


「お前が立派なレディにしてあげるんだ。そこの芋を、俺が見惚れるくらいの女に変えてごらん」


 離さないのだ。
 私たちの視線を、意識を、惹きつけて離さない。この楽屋がステージになってしまったかのような、そんな錯覚さえ。


「期限は一週間」


 ピ、と一本指が立てられた。

 微笑を携えたままの瞳が、まっすぐにテツローさんを捕らえている。刺すような及川さんの視線。


「それまでに俺を納得させられなかったら、オーディションをして他のダンサーを雇う。意義はないね?」

「……はい、ありま、せん」

「いい子。それじゃあ俺は店に戻るよ」
 

 テツローさんに反撃の余地を与えずに言い切って、及川さんは去っていった。

 嵐が、過ぎたかのような。
 静寂で満たされた部屋に、大きな大きな溜息が響く。

 それはもちろんテツローさんが吐いたもので、その落ちこみようときたら。ガックリと頭を垂れる姿はまるであれだ。

 昔の漫画の、ボクシングの。


「ジョーかよ、矢吹かよ」


 スガさんが含笑いをしつつツッコミをいれる。ついでに写メを撮る。それを嬉々としてSNSに投稿したところで、やっとテツローさんが顔をあげた。


「スガちゃん助け「お前が自分で蒔いたタネだべ?」……そうデスネすみませんあと笑顔が怖い」


 更にひとつ、テツローさんから漏れる溜息。その様子を見ていることしかできない私に、スガさんからの問いが飛んできた。


「そんで君は、ええと──」

「………愛莉、です」

「じゃあ愛莉! 愛莉はどうしたい? 訳も分からず連れてこられたみたいに見えたけど、こっから先はちゃんと自分で選ばなきゃだぞ」


 再び迫られる、人生の二択。

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