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(R18) Lv.5 (HQ)

第1章  Lv.5



 考えた。

 私は、どうしたいのか。
 私は、なにを望むのか。

 答えはひとつしかない。


「……私、踊りたいです」


 踊ることが好きだ。
 ステージに立つのは、もっと好き。

 開演を報せるブザーと共に上がっていく緞帳。少しずつ、開けていく景色。満員の観客。

 舞台を照らすピンスポットは太陽よりも熱くて、止むことを知らない拍手は割れんばかりの。

 あの昂揚感、あの興奮。
 ステージに立たなければ得られない特別な瞬間はどれも、私にとって──


「生き甲斐なんです。踊れない人生なんて息をしてないのと同じ、だから」

 スガさんを見て、それから。
 テツローさんのことを見る。

「だから、働きたいです。私をここで働かせてください。お願いします」


 私は深々と頭を下げた。

 ドキドキと、高鳴る胸。スガさんが「決まりだな」と笑んだ気配がする。

 顔をあげてみるとテツローさんもこちらを見ていて、まだちょっとだけ不服そうな瞳と目が合った。


「……途中で辛いだとか、もうやめるだとか、泣きごと言ったら詰めるからな」


 詰めるって、そんなまた物騒な。

 物騒なのは顔だけにしてください。とか、なんとか。頭に浮かぶ憎まれ口はひとまず呑みこんでおいて、私は改めて名を名乗ることにした。

「私、垂水愛莉です」
 差しだした掌を、テツローさんの大きな手がぶっきらぼうに握りかえす。


「黒尾だ、黒尾鉄朗。ここでバーテンしながらステージ構成を担当してる」


 繋がる体温。

 そこへ、もうひとつ。

 加わった熱。
 雪のような白肌。


「俺、菅原孝支な! 基本バックでピアノ弾いてるけど、新しいショーを作るときは作曲もしてる。よろしく、愛莉!」


 こうして、私の人生史上最も色濃く、そして目まぐるしい一週間が幕を開けたのであった。

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