第1章 Lv.5
「おお! 上手いじゃん!」
そう褒めてくれたのは、テツローさんのスマホを覗きこむ王子ルックスの彼だった。
「こりゃ鉄朗が惹かれるワケだべな」
優しさが咲くような笑み。
スガちゃんさんは天使なのかな。天使でしかないね。敬意をこめてスガさんと呼ぼうそうしよう。
「ただの従業員探しデス。惹かれるとか気色悪いからやめてクダサイ」
おのれテツローさん。
さっきからちょいちょい私をディスってくるのは何なのか。お口が悪いのか。悪いのは目付きだけにしてください。
「──……ふうん」
ピリ、と空気が張りつめた。
途端に全員が息を呑む。
テツローさんも、スガさんも、そして私も、ぴたりと動きを止めて店長の反応を待つ。
無条件で周囲を黙らせてしまうような、威圧感。彼はそれを生まれながらにして持っているかのようだった。
「ま、いいんじゃない?」
言いながら私を一瞥する。
美しくて、強かな、瞳。
「いいよ、うちで雇ったげる」
店長の言葉を受けて、テツローさんが安堵したように溜息をついた。スガさんは「よかったな鉄朗!」と天使のスマイルを見せている。
私は、ただただ、ポカンとして。
ひょんなことから決まった新しい居場所。彼らの様子から察すると、従業員が枯渇しているのは明白だ。
だからこそ動画(盗撮)からのスカウトだったり、オーディションもなしでの雇用が実現している。それだけ切迫しているのだろう。それは私にも理解できる。
だけど、なんていうか──
なんだろうこの違和感。
あまりにもトントン拍子に話が進みすぎて、どうにも気味が悪い。
【うまい話には裏がある】
そんな言葉が、脳裏を過って。