第1章 Lv.5
「っあ、ちょ、んもー!押さないでよスガちゃん! 一体何だっていうのさ!」
先ほど部屋を出ていった王子ルックスの彼が、華のある声を連れてくる。
開かれたドアの向こう。
姿を現したのは、絶世の──
「……え、うわ、何この芋っ子」
超がつくほどド失礼な絶世の美男子だった。芋とはなんだ、芋とは。
まさに踏んだり蹴ったりである。
私を芋呼ばわりした美男子は、どうやら彼こそが店長その人らしかった。
店長と呼ぶには若すぎる気もするけれど、よくよく見れば身に纏っているのは高級ブランドスーツ。
時計やラペルピンにはもれなく宝石がついているし、なるほど、店長というのは本当らしい。
「で、鉄朗はこの子をうちにスカウトしたいんだ? どうして?」
鏡台に腰掛けつつ美男子店長が問い、テツローさんが答えた。「俺、こいつのダンス見たことあるんスよ」二人の会話はつづく。
「じゃあお前たちは顔見知り?」
「いや、俺が一方的に。こいつよく近所の公園で踊ってて、ほら、動画も」
ち ょ っ と 待 て
動画とはどういうことなのか。大事なことなのでもう一度言いましょう。動画とは一体、どういう、ことなのか。
上京後も毎日欠かさなかった自主練。
それを、ご近所にお住まいのテツローさん(おそらく20代)に目撃されていたのは良いとして。
動画に撮るだなんて、それじゃまるで盗撮だ。その目付きの悪さも手伝ってか、テツローさんがただの犯罪者にしか見えない怖い。