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(R18) Lv.5 (HQ)

第1章  Lv.5



 スガちゃん、と呼ばれた王子ルックスの彼は、私のことを訝しげな目で見つつ部屋を後にした。

 雑多に物が置かれた手狭い部屋。

 壁には備えつけの鏡がズラリと並び、そのひとつひとつを囲うようにして電球が取付けられている。隙間なく散りばめられた化粧品たち。

 舞台メイク用のドーランに、羽飾りのついた付け睫毛、それから、艶やかな鮮赤のルージュ。ここがこのショーパブの楽屋なのは一目瞭然だった。


 そんな空間に、目つきの悪い王子(仮)と二人きり。


 対面にあるソファに腰かけた三白眼がこちらを見つめている。いや、睨んでる、のだろうか。顔が怖すぎてどっちだか分からない。

 いやな汗が滲んで。
 心臓が、暴れだす。

 まずここに至った経緯が目まぐるしすぎるのだ。自分でさえ理解が追いつかないくらい。一体、何がどうしてこうなったのか。

 ひとり、脳みそをフル回転させる。

 その間およそ数秒。
 私には永遠にも感じられた数秒が過ぎたあと、王子(仮)がようやく開口した。



「お前、ホームレス?」



「…………へ?」
 思わず素頓狂な声が出る。

 うら若き乙女を捕まえておいてそりゃあないでしょう。いや、確かにそう思われても仕方ないけども。


「違い、ます、一応」


 たどたどしく答えると、王子(仮)はさも興味なさげに「あ、そ」とだけ呟いた。

 続けざまに次の質問が飛んでくる。



「腹減ってんだろ? なんか食う?」



「!!!」
 これにはすぐさま頷いた。

 さぞひもじそうに見えたのだろう。何も言わずとも、私の空腹を見抜いた彼。

「客からの差入れしかねーけど」
 彼はそう溢しつつ、楽屋中央のテーブルに積まれた菓子折箱をいくつか開封して差しだしてくれた。

 はら、と落ちる小さな紙。
 メッセージカードだろうか。

 for TETSURO

 きっと、彼の名だ。

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