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(R18) Lv.5 (HQ)

第3章  Lv.12




 *


 外はすでに朝と呼ばれる時間帯。

 お店の閉店作業を終えた途端「マラソン忘れんなよ」とだけ残して、鉄朗さんは帰ってしまった。だいぶご立腹だ。

 まずいことしたなあ、と思う。

 光太郎があまりにもグイグイ来るから、とか、そんなのは理由にならない。嫌なら大声でもなんでも出せばよかったのだ。

 はあ、なんて、嘆息して。
 帰ったらもう一度ちゃんと謝ろうと、そう心に決める。

『俺が送ったげよっか?』
 退店しようとした私を壁ドンで捕まえたのは、やっぱり光太郎だった。

 毛ほども反省していないらしい彼に肩パンして『丁重にお断るしその手には乗らないから』おくり狼を撃退後、ひた走る高架下。


 朝焼けは、見えない。

 仰いでもビルばかりだ。
 圧迫感のある灰色の空。


 頭上の高速道路を駆ける車の排気音が、音速なんじゃないかと思うほどのバイクに追い越されていく。

 私から見える国道にはたくさんのタクシーと、ちらほらと大型トラック。

 歩道にはほとんど人がいない。
 さっき、居酒屋のシャッターの前で眠りこけるお兄さんを見ただけだ。

 あんなとこで寝てて大丈夫なんだろうか。その、命とか。トーキョーは怖いところでしょうに。

 そんなことを延々考えつづけ、見えてきた青看板には目的地の文字。

 鉄朗さんに「走って帰ってこい!」と叱られたときはどうなるかと思ったけれど、案外一駅間は短いらしい。

 こういうところはさすが都会である。
 一駅マラソンを私の地元でやったら恐ろしいことになるか、もしくは、恐ろしいことになる。

 軽く山越えしなきゃ帰ってこられないレベルだ。想像しただけで背筋が寒い。

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